Nのために
また読書記録です。
湊かなえ著「Nのために」を読みました📕
「イヤミスの女王」で有名な湊かなえさんですが、これは「純愛小説」とのことなので読んでみました。
こちらもネタバレってほどでもないですが簡単なあらすじありなのでご注意ください↓
あらすじ------
タワーマンションに暮らす裕福な夫婦だが、ある日夫婦ともに殺されてしまう。第一章は、事件に関わったイニシャル「N」の4人の証言と判決、そして主人公の一人、希美の10年後が描かれる。第二章からはそれぞれの視点からのモノローグで構成されて、真実とそれぞれの嘘が暴かれていく、といった話です。
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一般的な「純愛小説」ときいて想像するものではないけれど、それでは「愛」って何なのかしら。
それぞれの思い人「N」のために、嘘をついたり奔走したりするのですが、それを誰も最後まで相手に伝えることはないんです。この自己犠牲がこの作品で語られる「純愛」のように思います。
でも10年経ってやっぱり、真実を知りたい、知らせたいってそれぞれ思ってるんですよね。
「N」のためっていうのは、実は最終的には自分自身のことで、愛のエゴイズムを語っている作品のようにも感じました。
小説の好きなところは、ある人への感情が、好きとも嫌いとも言えない、微妙に揺らいだ中にずっと「ある」ところです。
映像になると、AさんはBさんに恋愛感情を持っている、とか嫌悪感を持っている、とか名前のつく感情・間柄に落とし込まれるものが多く感じます。
けど実際って、その人を結構冷静に多面的にみてたり、恋愛でも、好きになりそうだけど、自分の過去の経験だのなんだのがそうはさせてくれなかったり、人への想いってそんな単純じゃないですよね。口には出さないけど。けど確かにその感情はそこに「ある」。
小説が描いてくれるそういうところが何か好きです。
この作品もドラマ化されて評判が良いみたいですが、まだしばらく映像は観ずに余韻を大事にしたくなる作品でした。